2017年05月18日
社会・生活
研究員
倉浪 弘樹
先日、東京・銀座にある本社での仕事を終え、銀座の中央通りをぶらり歩いてみた。相変わらずの人の多さ、そしてその人種の多様さに圧倒される。中国からの爆買いツアーは沈静化傾向にあるようだが、最近はそれ以外の国からの旅行者を見かけることも増えている。
日本政府観光局(JNTO)によれば、2016年に日本を訪れた外国人旅行者数は前年比22%増で過去最多の2403万9000人(2017年1月時点の推計値)だったという。国別では、中国や韓国、台湾などの東アジアからの観光客が過半を占めているが、インドネシアやベトナムなどの東南アジアからの観光客も増加傾向にある。「国際化」が一段と進んでいるようだ。
(出所)日本政府観光局
(注)2016年の値は2017年1月時点の推計値
この中央通りでも、ひときわ賑わっているのが4月20日に開業した「GINZA SIX(ギンザ シックス)」だ。GINZA SIXは、2013年6月に閉店した松坂屋銀座店の跡地と近隣2街区を合わせたエリア一帯を再開発して誕生した。売り場面積4万7000平方メートルを誇り、高級ブランドなどのファッションや雑貨、飲食など241のショップが入居する銀座エリア最大の商業施設である。地下に「観世能楽堂」があるほか、屋上庭園も「江戸の庭園文化」をコンセプトに日本文化をアピールする拠点となっている。
写真提供:GINZA SIX リテールマネジメント株式会社
さらにGINZA SIXの1階には、「観光バス乗降所」が併設され、観光客にとって銀座の玄関口の役割を果たしている。実は、これまで銀座には観光バスの乗降場所や、待機のための駐車場が整備されていなかった。このため、目抜き通りである中央通りや晴海通りに乗降や路上待機のためのバスが多数停車し、交通渋滞を招いていた。こうした問題を解消するため、中央区が観光バス乗降所を設置したというわけだ。
写真提供:GINZA SIX リテールマネジメント株式会社
渋滞解消のカギとなるのが、バス乗降所と近隣の駐車場を連携させた、「ショットガン方式」と呼ばれる仕組みだ。乗降所の利用は予約制で、観光バス1台あたり利用時間は15分に制限されている。観光バスはこの時間内に観光客を下車させる。観光客がショッピングなどを楽しんでいる時間は、近隣の駐車場に移動して待機。出発の時刻になると、再びバス乗降所に移動して観光客を乗車させ、次の目的地に向かう。乗降所付近に滞留するバスをなくすことで、渋滞の原因を失くすのが狙いだ。
ショットガン方式は元々、JR千葉駅東口周辺の客待ちタクシーによる渋滞問題の解消のために、2006年に国土交通省が実施した社会実験で注目された。渋滞緩和に一定の効果があることから、その後様々な地域で導入が進んでいるという。
海外からの観光客への「おもてなし」の質が向上する一方で、見落とされがちな観光地で生活や仕事をする人々への気遣い。今回のような取り組みが盛んになり、観光客がそこで生活する日本人とともに快適に過ごせる空間が増えていけば、いよいよ日本も「観光先進国」と呼ばれるようになるのではないだろうか。
倉浪 弘樹